トランプ氏の発言から読み解くドル崩壊の序章

ドル崩壊が近づいています。

過激な発言で知られるトランプ元大統領は、ドルに対しても強硬な発言をしています。

私は各国がドルから離れるのが嫌いだ。各国によるドル離れを私は許さない。

基準としての役割を失うことは独立戦争に敗れるようなものだからだ。それはわが国にとって打撃となる

トランプ氏顧問、脱ドル化の国々へのペナルティーを協議-関係者

ドルを離れるなら、米国とのビジネスはなくなる。

我々は輸入品に100%の関税を課すからだ

トランプ氏、脱ドル化の国々に100%の輸入関税賦課へ-返り咲きなら

アメリカを世界最強たらしめる理由の一つがドルを支配していることです。

ドルは ”最強の国” アメリカのアキレス腱となっています。

ドル覇権を失えば、アメリカの国際社会に与える影響力は弱体化を免れません。

トランプ氏の発言を見て、「よしこのまま強いドルが続く!」と考えるのはかなり危うく、 私は「強硬手段に出ないとドルを強制できない段階」に来ていると読んでいます。

通貨の歴史とドル

この章では通貨の歴史を解説しますが、基本用語をおさらいしておきます。

世界で最も信用され、貿易や外貨準備で使われている通貨を「基軸通貨」と呼びます。

基軸通貨が世界を支配する様子を「通貨覇権」と呼びます。

基軸通貨は変わる

実は栄枯盛衰という言葉があるように、通貨覇権は永久には続きません。

17世紀以降の歴史においても、 基軸通貨は3度変わっています。

  1. オランダ (ギルダー)
  2. イギリス (ポンド)
  3. アメリカ (ドル)

国際通貨の歴史を振り返ってみます。

オランダの時代

17世紀初め、世界最初の株式会社と呼ばれるオランダの東インド会社は国際貿易において非常に大きな成功を収め、オランダの通貨ギルダーは国際的に広く使われた通貨として、世界で最初の基軸通貨になりました。

また世界で最初の証券取引所、 アムステルダム証券取引所も有名で、近代的な金融システムの礎を築いたと言えます。

イギリスの時代

18世紀半ばから19世紀になると、イギリスは産業革命を起点に経済力と軍事力を強化し、 国際貿易において支配的な地位を築きました。

その頃にはオランダはイギリスに比べて弱体化しており、 イギリスの通貨であるポンドがオランダギルダーに変わる基軸通貨となりました

同様にロンドンは世界で最も活況な金融市場となり、多くの貿易でポンドが使用されました。

アメリカの時代

第一次世界大戦と第二次世界大戦において多大な経済的損失を受けたイギリスに対して、 それらの国に武器供給し、貿易で儲けていたのはアメリカでした。

結果、この頃には大量の金がアメリカに保有されており、 豊かな天然資源と強い内需により世界一の経済大国となります。

国際金融の中心もロンドンからニューヨークに移り、 基軸通貨はポンドからドルに移行しました。

ブレトンウッズ体制とは、第二次大戦後に米国を中心に作られた、為替相場安定のメカニズムです。

各国通貨と米ドルの交換比率を固定し、ドルだけが金と交換比率を固定するという、ドルを間に挟んだ金本位制です。これを金・ドル本位制と呼ぶこともあります。

ブレトンウッズ体制と崩壊

通貨は世界を支配する

基軸通貨というのは 「世界で最も信用されていて、 最も使われている通貨」のことです。

ドルさえあれば世界中のあらゆる資産が買えるということです。

基軸通貨国のアメリカはドルを自由に発行する権限を持っており、 これが世界最大の利権となります。

アメリカはドルを発行することで、 諸外国に支援という名目で貸し付けて国際社会における優位に立てるなど、 その効果は絶大です。

このような巨大な利権を手放すことはできず、 トランプ氏は躍起になっているということです。

各国で進むドル離れ

すべての国がこのようなドル一強体制を甘んじて受け入れているわけではありません。

BRICSを初めとする国々は「脱ドル化」の動きを進めており、 アメリカはそれを注視し牽制しているというのが現状です。

BRICSとは、 ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ の連盟のことですが、 当然ながら一枚岩ではありません。

最も経済力を持っているのは国は中国ですが、 中国の通貨の「人民元」を基軸とすることは、ロシアやインドが認めるはずもありません。

それほど通貨支配は莫大な利権が絡んでおり、 話を複雑にします。

参考:BRICSに新通貨構想 脱ドル&脱西

BRCISはユーロのような共通通貨の発行も模索しているようですが、 これも順調ではありません。

通貨覇権の問題点

不公平感

現在、アメリカだけが世界の基軸通貨であるドルを自由に発行する権利を持っていますが、これは明らかに不公平です。

それでも 世界経済がドルを受け入れている理由は、アメリカが世界最強の軍事力を有し、世界最大の経済大国であり、民主主義国家であるからです。

この状況では、最もリスクが低い米ドルを選ぶのが合理的な選択です。

アメリカ以外の国々は外貨準備としてドルを基軸に外貨を積み上げる必要がありますが、アメリカはドルを自由に発行できるのです。

これこそが最大の不公平感を生む要因です。

不公平というのは心理的・感覚的なものですが、無視できない大きな要因です。

インフレの問題

また、米国の政府債務は2004年の7.5兆ドルから2024年には35.5兆ドルへと急増しており、年平均6.5%のペースで拡大しています。

引用:米国政府債務

政府債務は、新たな貨幣供給を意味し、その増加に伴い通貨の価値が低下してインフレが発生します。

この増加率は米国10年国債の利回りを大きく上回るため、米国債を保有することで金利収入を得たとしても、価値の減少スピードには追いつけません。

「米ドル」という資産は持っているだけで損するという事態が常態化しているということです。

引用:米国10年国債-利回り

米国に限らず、 どの国の通貨においても長期間保有するとインフレ負けすることが判明しているので注意が必要です。

次の基軸通貨は人民元?

書籍『世界秩序の変化に対処するための原則 なぜ国家は興亡するのか』では、次の基軸通貨として人民元(中国)の可能性があることが記されています。

中国は世界第2位の経済大国であり、世界第3位の軍事力を有し、世界第2位の人口を抱える国です。

その国力は非常に高く、過去30年で最も成長を遂げた国の一つです。

しかし、私は中国が独裁国家である限り、人民元が通貨覇権を握ることはないと考えています。

米ドルが世界に選ばれている理由の一つは、アメリカが民主主義国家であることです。

通貨に関する決定を行う際に、民主的な議論プロセスが保証されていることが重要です。

反対に、全権を独裁者が持つ国家の通貨は、信用性に欠け、リスクが非常に高いです。

独裁国家の通貨を使っていると、巨大な軍事力や影響力を盾に周辺国に対して借金の帳消しを迫ってくる可能性も考えられます。

人民元は信用に問題あり

人民元の信頼性の低さを裏付けるものとして、米ドルと人民元の為替レートがあります。

人民元と米ドルは管理変動相場制であり、自由市場で価格が決定されているわけではありません。

市場での需給に応じて自由に価格が決まる変動相場制の米ドル、日本円などと異なり、中国人民銀行(中央銀行)が管理変動相場制を導入しています。

人民元とは 中国の通貨、2つの市場で取引

中国政府は、人民元の対米ドル価値を一定の範囲内で維持しており、米ドルに対して元安になった場合には為替介入を行います。

理由は、人民元が国際的に信頼を得ていないだけでなく、中国国民からも信用されていないためです。

政府が米ドルに対する価値を保証しなければ、多くの中国国民が人民元を持ちたがらず、外貨に交換しようとするためです。

引用:世界の外貨準備高(含む金保有) 国別ランキング・推移

中国が膨大な外貨準備(ほとんどが米ドル建)を保有していることもこの説の裏付けとなります。

次なる基軸通貨

次の基軸通貨は間違いなく「ビットコイン」であると予想しています。

不公平感がない

特定の国家の通貨を基軸にすると、必ず不公平が生じるといのは前章で解説したとおりです。

これは「誰かが管理しているものを、他の人が使う」という時点で必ず発生します。

しかし、ビットコインは特定の国家や、企業に管理されているわけではありません。

今後、世界は通貨の選択を迫られることになりますが、 「ドルもユーロも微妙、 人民元は独裁国家の通貨だから使いたくないな・・」 となった場合に妥協点としてビットコインが選択されます。

※ 日本円やイギリスポンドはそもそも選択肢にすら入っていないので考慮する必要はありません。

実はビットコインは通貨に最も理想的な性質を持っています。

「妥協する」というのはアメリカ側の視点です。

アメリカとしては、他の国家が発行する通貨が基軸になるのは到底我慢ならないということです。

以下は、実際に米ドルに反旗を翻した国の顛末です。

2000年10月、イラクのサダム・フセイン大統領は「石油のドルでの販売をやめ、ユーロに切り換える…」と発表しました。
その後、イラクは2003年2月までに260億ユーロの石油を売り上げました。

しかし、その1カ月後、イラクとフセイン大統領に思いもよらぬ悲劇が襲いかかります。

なんと、突如として米国が「イラクは大量破壊兵器を保有している」という難癖をつけ、イラクの非武装化、イラクの民主化、そしてイラク市民の開放、強大な危険から世界を守るなどの大義を掲げて宣戦を布告し、イラクへ軍事侵攻 したのです。

 

一方、アフリカ最大の石油埋蔵量を誇るリビアでも同様のことが発生します。

2009年、リビアの指導者であるカダフィ大佐はアフリカ諸国に対し、ドルの代わりに金を用いた新しい通貨での石油売買を提案 します。

次に何が起こったかは想像するに難くない。

米国が主導するNATO(北大西洋条約機構)は、「自由」の名のもとに連合軍がリビアを攻撃しました。

石油取引が米ドル決済である理由

米国はドルの覇権を維持するために軍事力を平気で使い、民間人の犠牲も気にしません。

このため 米国以外の国家の通貨が基軸通貨になることは極めて難しく、仮にそのような動きがあっても 米国が全力で潰しにかかるでしょう。

 

しかし、他の国の通貨ではなく、「誰のものでもない平等なビットコイン」が市場で選択された場合は、米国は軍事力や圧力を使うことができず、 妥協することになるでしょう。

「ユーロも人民元も、ルーブルも嫌だけど、ビットコインなら仕方ないか」ということです。

これだけ多様化と平等が訴えられている中で、 通貨だけはアメリカが好き放題発行できるというのは明らかに不公平であり、 誰でも入手の機会があるビットコインが選択されるというのは極めて合理的です。

ビットコインの平等性

ビットコインはどのように平等なのでしょうか?

いくつかの要因で考えてみましょう。

特定の国に支配されない

ビットコインには管理者がおらず、 自由に発行できる者もいません。

他の国の通貨を基軸にしようとして争いが生じるなら、 どの国のものでもない通貨を使うのはごく自然な選択だと言えます。

誰でも入手可能

ビットコインは、どの国にいる人でも平等に入手できる機会が与えられています。

電気とコンピュータがあれば、どの国の人でもマイニングを通じてビットコインを獲得するチャンスがあるのです。

これは、アメリカだけが発行できるドルや、特定の地域でしか採掘できない「金」とは異なります。

資源が少ない国でも、ビットコインを手にするチャンスが平等にある点が特徴です。

明確な需要

「金」は即座に換金するのが難しく、持ち運びも手間がかかります。

一方で、ビットコインの決済は瞬時に完了し、換金市場も成熟しているため、ビットコインから他の法定通貨への換金も簡単です。

「価値の保存」の役割しか持たない金と、「価値の保存」に加えて「支払い」の役割も担うビットコインでは、ビットコインが金の完全上位互換と言えるでしょう。

ただ貯めるだけの財産と、支払いも貯蔵もできる財産があれば、多くの人が後者を選ぶのは当然だと思います。

まとめ

ビットコインこそが、世界で最も優れた通貨であり、 最も民主的で、「支配」の対極にある存在です。

ビットコインが世界の基軸通貨になるのは避けられない事実だと、確信を持って言えます。

利権と欲がある限り、 特定の国家の通貨が永久的に覇権になるということはありえない のです。

 

米国から制裁を受けている一部の国では、すでに貿易取引にビットコインを使用する動きが確認されており、この傾向は今後さらに広がると予想されます。

すでにメッキが剥がれつつある米ドルですが、米ドルが信用を失うとき、この動きは急加速するでしょう。

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