ビットコインはこの世で最も優れたお金(貨幣)である。
と聞いてどう感じますか?
本題に入る前に まずはこちらの2つのチャート(価格推移)をご覧ください。
上が [ゴールド/円]、 下が[ビットコイン/ドル] のチャートになります。
どちらも 右肩上がりで 金も ビットコインも 価値が上昇 しているように見えます。
実はもう一つの視点として、
金 や ビットコイン に対して 円 や ドルの価値が下がっている
という見方もできるのです。
今回は ビットコイン や 株 が値上がりする理由を貨幣理論と経済学で考察してみようかと思います。
※ ビットコインの購入を奨励するものではありません。
目次
優れた貨幣とは何なのか
ビットコインの貨幣としての立ち位置を考察するには 貨幣への理解が必要です。
貨幣とはお金
皆様も知っての通り、 貨幣とはお金のことです。
一つ前提としてお金というのは「みんながお金だと思っているもの」がお金になるということです。
遥か昔、物々交換が主流だった時代から、皆が共通して欲しがる物品が 貨幣(お金)になっていきました。
代表的なものでは、 金、銀、銅、貝、石、牛、塩 などです。
これらの貨幣は、 「物品貨幣」と呼ばれますが、 金を含めて 全ての貨幣は 競争に敗れてその座を失ったと言えます。
現在でも安定した価値を持っているのは 金(ゴールド) ですが、 通貨としての役割はありません。
ここで重要なのは、「大衆が欲しがる物は、どんな物でも貨幣になれる」ということです。
貨幣に必要な条件
貨幣には以下の3つの条件が必ず揃っている必要があります。
- 規模
貨幣を取引に応じて細かい単位に分割できる必要がある。 - 場所
貨幣を持ち運べ、あらゆる場所で取引できる必要がある。 - 期間
時を超えて価値を保存できる必要がある。(腐ったり錆びたりしない)
管理通貨(円やドル)が登場するまで 通貨競争で常に勝ち続けた 金(ゴールド)は 条件を全て満たしています。
金貨は持ち歩き可能で、 枚数を持つことで規模の市場に対応し、 時間が経過しても錆びることはありません。
貨幣のストック・フローという考え方
全ての物品貨幣を考えるうえで必ず必要なのが「ストック・フロー」という概念です。
ストックフロー比率とは、 ストック(現存する総量)を フロー(1年間で新規供給される数量)で割ったものです。
この比率が高いほど 新規供給量が少なく貨幣適正の高いものとなります。
貨幣の大前提となるのが、「希少性のあるものにしか価値がつかない」ということです。
これは日常生活でもよく感じると思います。
レア(希少)なカード や、 珍しい物品、 限定アイテムには 驚くほど高い値段が付くことがあります。
反対に、たくさんあり 誰でも手に入るノーマルカードには値段がつきません。
ここで 金以外の物品貨幣が何故競争に敗れて使われなくなったのかを見ていきましょう。
銀
かつては 銀貨として、金貨と双璧を成す物品貨幣でした。
ところが金に比べて 増産が非常に簡単であることから、 銀の価値が上がると 資本家は銀を大量生産するべく 採掘体制を増強します。
この結果、 市場で銀はあり余ることになり、余剰分が売られ続けることで価値が下がるのです。
その他の物品貨幣
かつて 貝(珍しい貝殻)が貨幣だった時代もありますが、漁技術が発達し 船で容易に貝を大量に獲得できるようになると、
貝は希少性を失い 通貨としての役割を果たせなくなります。
金 以外の全ての物品貨幣は 供給過多(いざとなれば供給が増えてしまう仕組み) により貨幣の価値を失ったのです。
なぜ 金は最強の貨幣だったのか
金 はストックフロー比率が極めて高く、現存する金の総量に対して、 新規供給はごくわずかでした。
金は希少性と採掘の難しさから、 容易に増産ができず、 希少性は常に保たれているのです。
これは現代でもほぼ変わりませんが、 貨幣として使用されていないので 「最強だった」と過去形にしています。
金本位制の過ち
現代の貨幣を語るうえで、その始祖となった金本位制は必ず理解しておく必要があります。
金本位制とは、中央銀行が金(ゴールド)の現物を保有し、 金と交換可能な保証書を発行することです。
この保証書は金との交換が保証されているので、兌換紙幣と呼ばれました。
いざという時に価値がある金に交換できるので、 この紙幣にも価値があるという考え方です。
これにより、 重たい金を持ち運ぶ必要がなくなり、 また 取引も銀行を経由して 自由に行えるようになったため、経済と貿易が活発になりました。
ところが金本位制には致命的な欠陥があります。
中央銀行が保有している金以上の紙幣を発行してしまう ことです。
本来であれば、 保有している金以上に紙幣を発行することはタブーですが、 主に国家戦争時にこの規律は崩壊します。
国家の存亡がかかっているときに財政規律を気にする国などないからです。
これにより各国が中央銀行で金を保証する金本位制から、 ドルのみが金と交換できるブレトンウッズ体制に移行し、 1971年にそれすらも崩壊しました。
金本位制は人類史上最も優れた貨幣システムですが、それを維持する「秩序」が無いため存在はできないのです。
この「秩序」がビットコインを読み解く上で非常に重要なので頭の片隅に記憶しておいてください。
現代貨幣とは
矛盾だらけの現代貨幣
今の貨幣システムは管理通貨と呼ばれるシステムで、中央銀行が発行した紙幣は金と交換してくれません。
その昔、紙に文字を書くだけでそれが貨幣になるなんてあり得たでしょうか。
そんな価値のないものを受け取る酔狂な人間など存在しなかったはずです。
現代貨幣は、 上述した金本位制で紙幣というものを馴染ませて、どさくさに紛れて金保証を外した、ただの紙と言えます。
紙幣には何の価値もありませんが、 全員が「価値がある」と思い込むことで貨幣になります。
金本位制は都合よく通貨膨張したい政府側に不都合があり、恣意的に抹消された文化なのです。
保有していると減価する貨幣
まず、 現代の管理通貨は 貨幣に必要な3条件(規模 / 場所 / 期間)のうち、期間を満たしていません。
期間とは、保有している限り価値が一定、もしくは 少しづつ上がり続けるということです。
日本にいると特に分かりにくいですが、 管理通貨(円やドル)は 持っていると徐々に価値を失っていくのです。
1年前に預けた100万円 は今も100万円ですが、通帳の表記が同じでも、実は インフレ(物価上昇)という形で 貨幣の価値は失っているのです。
去年は100円で買えたお菓子が、 120円になっている。 このようなものがインフレです。
考え方としては、商品の値段上がっているわけではなく、 お金の購買力が下がっているということがポイントです。
つまり、 円やドルは長期的に保有すると必ず損する資産なので貨幣適正は無いのです。
将来のために貯金が大事と言いながら、 実際に貯金すると時間経過で価値が下がるので「矛盾した貨幣」と表現しています。
なぜ減価するのか
「だったらインフレしないほうがいいじゃん」という意見もありそうですが
現代経済学では、 ゆるやかにインフレするのが正しいとされています。
日本経済は30年近くデフレという物価が下がり続ける状態が続いたので、 日本円の価値が下がっていることは実感しにくい構造でした。
一方 アメリカ や ユーロ圏では、 およそ 年 2% のインフレ を金融政策の目標とし、 中央銀行が金利を操作してきました。
以下は 2000年からの各国のインフレ率推移を示したもので、 黒実線は日本ですが ほとんど期間で 0を下回っている(デフレ)に対して、 アメリカ および EU は安定して 物価上昇基調にありました。
日本は デフレにより、物価を守った結果、失ったものは競争力です。
デフレ政策により物価が上がらなかったことで、 GDPは中国、最近はドイツにまで抜かれています。
この日本の失態は「失われた30年」と言われており、 デフレ政策が失策であることを物語っています。
世界的な潮流としては、 ゆっくりインフレ(物価上昇)することが経済政策の「スタンダード」ということになります。
つまり、 管理通貨の価値は時間経過で減価するのです。
金融政策とは何なのか
金融政策とは、市場に供給するお金の量をコントロールすることです。
ゆるやかにインフレするには、 国債を発行し 市場への資金供給を増やします。
インフレ目標 2%にも根拠があり、 物価と失業率の関係を示したフィリップス曲線において NAIRUと呼ばれる 失業率が最も低く、物価上昇を最も抑えることができる数値的目標が2%という数値なのです。
アベノミクスでは、 日本でもインフレターゲットを 2%に定めて物価を上昇させる政策を行いました。
また上記グラフではデフレ下における増税が下策であることを示しており、 安倍晋三氏が 2度に渡り 消費増税を延期したのはこれが理由です。
なぜ 株、金、不動産 は価値が上がるのか
基本的に中央銀行は物価を上昇させるために、市場に資金を供給します。
余ったお金は、株や、金、不動産といった希少性があり限られたものを購入するのに充てられてます。
つまり、 金などの価値が上がっているわけではなく、 管理通貨の購買力が下がっているのです。
以下は SP500(アメリカの代表500社の株価指数)ですが、 右肩上がりになっているのは、 偶然ではありません。
現代経済学のセオリーに従って 貨幣供給を増やした結果、 株に対してドル が価値を失っていったのです。
これにより 一つの考え方ができます。
「株や金、不動産」などの限りあるものは 長期的には原則 価格が上がり続けるものなのです。
逆に言うと、 円やドルは長期的に希少性資産に対して価値を失い続けます。
株価が下がり景気が悪くなれば、それを治すために通貨供給を増やします。
インフレターゲットを定めて通貨供給を増やす限り 株価は上がり続けるのです。
世界経済はデフレこそが 最悪な状況と認識しており、絶対にデフレしないようにコントロールします。
ビットコインはなぜ最強の貨幣なのか
貨幣に必要な条件を完璧に満たす
ビットコインは貨幣に必要な3つの条件(規模/場所/期間)をすべて満たしています。
まず、ビットコインは 1億分の1という単位まで分割可能です。
この最小単位を Satoshi と言い 規模の市場性を満たしています。
場所についても、 ビットコインはあらゆる場所に10分で送金が可能で、 取引の場所を選びません。
100億円の金をブラジルに移動するにはいくらかかるでしょうか?
100億円のビットコインは同じ条件でも1000円で送金できます。
最後に期間ですが、 ビットコインはインターネットが存在する限り 無くなりません。
つまり、100年後も1000年後も残っている可能性が高い。
完璧な供給設計
貨幣にはストックフロー比率が重要だと上述しました。
ビットコインの新規供給量はあらかじめプログラムされており、 4年おきに半減します。
その都度、 ビットコインのストックフロー比率は高いものになり、 2025年で金の希少性を上回ります。
2028年には 金の4倍のストックフロー比率となります。
つまり、 ビットコインの新規供給は減るのに対して、 ビットコインを購入する円やドルは新規供給が増え続けるのです。
ビットコインの新規供給が減ると、 新規で店頭に並ぶわずかなビットコインの他は 既に持っている人から購入するしかありません。
供給量がほぼ一定の金は 価格が上がり続けていますよね。
では、供給量が下がり続ける貨幣の価格はどうなるのでしょうか。
非中央集権システム
ビットコインには、管理者がいません。
金本位制のように 秩序を忘れて 無制限に供給を増やす人間もいなければ、 指示命令できる人間もいません。
ビットコインを効率よく採掘(入手)するには コンピュータのGPU演算パワーを増やすことが近道ですが、 計算力がいくら増えても一定枚数しか供給されないようにプログラムされています。
ビットコインは 市場で最も公平かつ最も優れた美しい貨幣システムなのです。
ビットコイン開発者のサトシナカモトは現代貨幣の問題点に一石を投じるシステムを構築したと言えます。
検閲耐性とハッキングされない仕組み
金 や 既存紙幣は 政府の一存により強制的に押収したり、取引を差し止めることが可能です。
ところがビットコインはインターネット上に存在しているため、政府が干渉できない資産を作ることができるのです。
これは貨幣史上最大の革命でもあります。
人類の貨幣の歴史においてビットコインが登場するまでは 誰かに隠れて資産を持つことは不可能だったのです。
誰にも検閲されず、決して止めることができないのがビットコインです。
現在のビットコインをハッキングすることは 理論的に不可能なのです。
システムの堅牢性ではなく、単純に計算力で多数決をするシステムのため、物理的にハッキングできないとも言えます。
まとめ
ビットコイン自体は価格変動が激しく、投機的な側面が強いため 諸手を挙げて投資を勧めるということはできません。
7年以上 ビットコインに関わっている 私が あえて ビットコインを「投資」という視点で考えを記載するとすればこのようになります。
「ビットコインに短期的な視点は不要」
ビットコインの短期的な価格を予測することは私はもちろん、プロでも不可能です。
では長期的にはどうでしょうか、私は上がると予想しています。
今はまだビットコインに興味がないという方は多いと思いますが、今後 新しい貨幣の概念としてビットコインの理解は必ず必要になります。
よく、ビットコイン反対者の意見に、 ビットコインの処理速度の遅さや ビットコインの取引可能量の少なさを指摘する方がいますが、この指摘はナンセンスです。
この課題は既に人類が 1800年に解決済みです。
そう 金本位制です。
長くなりそうなので別の記事にしようかと思いますが、 「ビットコイン本位制」という考え方は 史上最も完成された貨幣システムになり得るのです。
今回も長い記事を読んでいただきありがとうございます。
今回の記事は書籍「ビットコインスタンダード」と複数の経済書を参考に執筆しました。
特にビットコインスタンダードは少し高いですが、一読の価値があります。